制度の趣旨と導入の経緯
一般に著作物を複製することは著作権者の許可なく行うことはできないが個人的に使用することを目的とした複製についてはその規模が零細であって権利者の利益を不当に害するとはいえないし、また仮に規制したとしても現実に摘発するのは困難であることから自由にかつ無償で行い得るとされている(著作権法30条1項、私的複製。以下特に断らない限り条文は日本の著作権法のもの)。
しかし近年の技術の発達によりデジタル方式で録音や録画を行うことによりオリジナルと全く同質のコピーが容易に作成できる高性能な機器が登場し、それらが一般家庭に広く普及したことによってそのような利用方法で音楽・映画等を楽しむ利用者が増えている。これに伴い、個々の利用については零細であっても全体として見れば無視できないほどの規模で録音・録画がなされるようになった。そのため、これらの大規模な利用を自由に許していたのでは権利者が本来得られるはずの利益が得られず利益が不当に害されることになるのではないかという点が問題となった。特に日本ではレコードがアナログからCDに移行して以来、レンタルしてきたCDをデジタル方式で私的録音する利用者が増えたことによってCDの売り上げが減少し、利益が得られないといった事態が生じたのである。
この問題を解消するためにドイツやアメリカでは権利者に対する補償制度を既に導入しており(注:両国に限らず欧米先進諸国に日本のようなレンタルレコード店はない。ただし、CDの価格は日本の半額以下と安価である)、日本でも同様の措置を講ずるべきではないかとの検討がなされその結果、1992年の著作権法一部改正によって私的録音録画補償金制度が導入された。
これにより、利用者による私的な録音・録画を自由に許しつつもその複製が一定の機器・メディアによって行われる場合に限って権利者に報酬請求権を与えて補償金を得させ両者の利益の調和を図ることとなった。